宮部みゆき

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今年の夏は親子でいろいろな場所に行きましたが、
旅先にも山行にも必ず持って行くのが文庫本。
特に、静かなテント場で読む文庫本は山旅を豊かにしてくれる気がします。テント泊の山行に持って行ったのが宮部みゆきさんの「チヨ子」。
山には関連の無い本なのですが、
さすがに天才宮部みゆきさんの短編集は読み応えがありました。

今回の短編集は「超常現象を題材にしたホラー&ファンタジー」と銘打たれていて、
どの作品も不思議な世界をかもし出しています。

■雪娘
小学生時代に6年間ずっと一緒だった男女四人の仲間達。
仲間たちの共通の友達で20年前に謎の死を遂げたユキコ。
ユキコのことを思い出しながら仲間の内の一人が営む居酒屋に集まった四人は、
お互いの近況を話しながらも話題は自然とユキコのことになっていく。
そしてユキコにまつわる不可思議な現象があらわれてくる。

■オモチャ
商店街にある小さなさびれたオモチャ屋さん。
そこはクミコの日頃全く付き合いのない叔父さんが営むオモチャ屋さんだった。
妻の突然死に見舞われた叔父さんの周囲では、
遺産相続でもめる親族や噂好きな近所の人などが入り乱れる。
そんな時オモチャ屋さんに関する妙な噂が広がって来るが、、、

■チヨ子
5年前に使われたきりで埃をかぶっていたウサギの着ぐるみ。
アルバイトのためにその着ぐるみを被った大学生のわたしは、
被ったとたんに周囲の人がぬいぐるみやロボットに見えることに驚かされる。
不思議なぬいぐるみを被っていろいろな人を見たわたしは、
大切にしていた自分のぬいぐるみ「チヨ子」をふと思い出した。

■いしまくら
小さな出版社に勤める石崎が高校生の一人娘である麻子から聞いたのは、
寒い冬の朝に水上公園の池で見つかった若い女性の他殺体の話。
殺された女性は麻子のボーイフレンドの幼なじみ。
水上公園の縁に若い女性の幽霊が出るという話が発展して、
事件は様々な要素を持った不思議な結末を引き寄せて来る。

■聖痕
子供相手、学校相手、家庭相手を中心とした調査会社を開いている私。
私にもとに相談にやって来たのは和食店を営む初老の男。
男には分かれた妻との間に子供がいるが、
その男の子は重大な犯罪を犯して今は保護司の元で立ち直っていた。
しかし、男の子には「黒き救世主(メシア)」の動きが見えるというのだが。

全体的に不穏な題材を取り上げた短編集ですが、
おどろおどろとした事件の中身を追うのではなく、
それぞれの事件にまつわる人の心の動きを中心に書かれた短編集です。

さすがに宮部みゆきさんの書かれた短編集らしく、
事件の経緯を人の心の動きや周囲の動きを巧みに表現しながらも、
意外な結末に導いて行くというのはすごい文章力だなと思いました。

時間が開いた時に少しずつ読めて完結出来るのが短編集の良さ。
旅に一冊短編集を持って歩くのは心を豊かにしてくれると思います。

おすすめの一冊です。
ぜひ!

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